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空を見上げると、レースのカーテン越しに眺めるような太陽が浮かんでいた。
太陽の眩しさが和らぎ、日食観察用のメガネを使わなくても、欠けていく様子を見ることができた。
灰色の雲が流れ、風が吹いていた。

干潮のため、浜の少し沖合いにリーフが姿を現し始めていた。
防水バックに撮影機材をしまい、海のなかを歩いてリーフへ渡った。

風が強まり、雲がものすごい速さで流れていった。
太陽が小さくなるに従い、徐々にあたりが暗くなっていった。

そして空から太陽が消えた。
浜のほうから歓声があがり、誰かの指笛が鳴った。
あたりは日没直後の暗さになり、水平線付近の空がオレンジ色に染まった。
カニがどこからともなく姿を現し始め、生きものたちの賑やかな音がリーフに響き渡った。

紺色をした空が明るさを取り戻し始めると、夕焼けのような色彩が瞬く間に消え、再び太陽がぼんやりと姿を現した。
厚い雲のため、ダイヤモンドリングは見ることができなかった。

暗くなっていた時間は、およそ3分ほど。
カメラを片付け、浜へ戻ると、ほとんどの方が引き上げ、余韻を楽しむひとがポツリポツリといるだけだった。
太陽はまだ欠けているけれど、ぼくの皆既日食体験はこうして終わった。

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July 22



水平線近くに浮かんでいた入道雲が、風に流されて近づいてくる。
発達した雲の塊が太陽を遮り、あたりが少し暗くなった。
風に運ばれた雨がポツポツと肌を打ち、水の匂いが漂い始めた。
本格的な夕立が来るまえの水の気配。

突風が合図となり、無数の雨粒が海面を叩いた。
全身が水に包まれ、心が躍った。
口を開き、雨を舐めた。

雨は激しさを増し、風に舞った。
気持ちよさを通り越し、怖くなるような降り方だった。
そして空が明るくなるにつれ、嘘のように雨があがった。

雲の過ぎ去った方向に目を向けると、綺麗な虹が空に光っていた。
セミが再び身体を震わせ、まぶしい日差しが肌を焼いた。

仰向けになり、海にぽっかりと浮かんでみた。
高ぶっていた気持ちが徐々に静まり、身体から力が抜けていくような気がした。
目の前には真っ青な空が広がっているだけだった。

旅の最後を締めくくるには、ちょうどいい出来事だった。
目をつむり、島で出会った人たちをひとりひとり思い出していた。
出会えたことに感謝し、ぼくの旅は終わった。

沖永良部島・屋子母海岸にて。

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July 25

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大きな虹をくぐり抜け、羽田空港に到着。
一ヶ月ちょっとぶりに東京へ帰ってきた。

July 27

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沖永良部島で、携帯をまた水没させてしまった。
今回もぼくの不注意で壊してしまったのだが、“防水”を謳っているわりにはあまりにも貧弱。
海中へ落ちた携帯を地元の若者が潜って拾ってくれ、FOMAカードを回収することができたのは不幸中の幸い。
本体は動作不能だったけれども、カードは運が良いことに生きていた。
おかげで予備の携帯へカードを差し込み、事なきを得た。

そして昨日、那覇でネット通販をチェック。
壊したのと同じソニーの防水携帯「S0902iWP」を中古販売業者から購入し、先ほど代引き郵送で到着した。
ストレート型で防水機能のあるFOMA携帯は、残念ながらこの機種のみ。
なので、仕方なく再び購入。
金額は送料手数料なども入れて、1万円ちょっと。痛いなぁ。
釧路川、吉野川、沖永良部島。恥ずかしい話、これで4個目。

毎度思うんだけど、こういうタフな携帯が欲しい!
日本仕様でどこか販売してくれないかなぁ。

July 28

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沖縄から送った自分宛の段ボール箱が届いたので、早速汚れた服を洗濯機へ放り込み、キャンプ道具を片付けた。
と書くと、テキパキと動いているように見えるけれど、実際はひとつの作業が終わるたびに“ドッコイショ”と長い休憩をとってしまい、簡単な作業にも関わらず、あっという間に日が暮れてしまった。
いやはや。サボってばかり。
今日一日で、いったい何本のアイスを食べたのだろうね。

July 29

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1ヶ月以上ぶりに愛車のエンジンを掛け、ハンドルを握った。
ついこの間まで太陽の直射日光を浴びても平然としていたのに、アスファルトの照り返しには我慢できず、クーラーのスイッチを入れた。

渋谷へ出かけ、写真展に使用した作品を引き取り、新宿や原宿の人混みに新鮮な驚きを抱きつつ帰宅した。
水シャワーを浴び、黒糖を氷水で溶かした液体にシークワサーを絞り、ラムを入れて飲んだ。
さっぱりとした甘さの南国カクテル。

夕方。虹色のハンモックを室内に吊し、ゆらゆらと身体を預け、窓から入ってくる自然の風を楽しんだ。
気分だけはいまだ南の島。

July 30

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旅から戻り、この1ヶ月間に起こったニュースをまとめてチェックした。
不幸な出来事ばかりが目に飛び込み、どうしようもないぐらい暗い気持ちになった。

ふと、昔出会った人たちのことを思い出し、顔を見たくなった。
棚から箱を取り出し、ずいぶん前にプリントした写真を眺めた。

タクラマカン砂漠に沿って旅を続け、好奇心の赴くままにほっつき歩いていたことがある。
いまから15年以上の前のことだ。
毎日のように地平線を眺め、ときどき現れるオアシスで胃袋と心を満たした日々。
お前はどこから来た?こいつを喰ってみろ。うまいぞ。
バザールで温いコーラーを飲みながら、勧められるがまま喰らったシシカバブー。
自分が生まれ育った環境とは全く違う土地に暮らす人たちと片言の言葉と身振りで会話をし、なんだお前も俺も同じ悩みを持っているじゃないかと、と笑いあったこともあった。
自分とは違う宗教観や価値観があることを肌で知り、この旅でぼくのモノサシは大きく成長したと思っている。
そして異文化や他者を知ることで、自分という存在を考えるきっかけとなったのだ。

当時出会った人たちは、いまも元気でいるだろうか?

July 30

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冷蔵庫からビールを取り出し、やれやれと飲んでいる。
つまみは馬肉の燻製モドキ。
熊本に日帰りで出かけ、先ほど帰宅。
空港からそう遠くない場所での仕事だったのだが、無風のうえに湿度が高く、まるでサウナに入っているような蒸し暑さだった。
飲んだ水がすぐに汗となって蒸発し、身体にまとわりつく感じ。
でも、ぼくはこういう暑さが嫌いじゃない。

夏本番。いよいよ、川へ飛び込む季節がやってきた。

July 31


June 2009-August 2009